Research
自然発酵メタゲノム解析
自然発酵が生み出す多様な微生物環境を、様々な情報技術を駆使して解析します。自然発酵は人が管理しているように見えて、実際には自然の営みに深く支えられています。カカオの果肉やコーヒーチェリーの粘液質、そして日々かき混ぜられるぬか床には、酵母や乳酸菌を中心とした多様な微生物が息づいており、それらが生み出す生体高分子や代謝産物が、チョコレートやコーヒー、漬物の香りや味わいの個性に大きく貢献しています。同様に、ぶどうの果皮、ワイナリーや酒蔵の壁や空気にも酵母、乳酸菌、黴が住みつき、それぞれが生み出す生体高分子や代謝産物が、ナチュラルワインや生酛造りの日本酒の香りや味わいを形づくっています。自然発酵では、画一化された美味しさに収束するのではなく、酸味が際立つもの、厚みのある旨味をもつもの、複雑で奥行きのある風味など、多様な方向性の美味しさが生まれます。我々は、このような風味の多様性の背景にある分子レベルの相互作用や揺らぎを、ゲノム配列や成分データをもとに数値として捉え、比較・解析することを目指しています。微生物の組成やそのゆらぎが見えつつあります。自然はなんとなく良いと安易に受け入れるのではなく、その短所にも同時に光を当てることで、チョコレート、コーヒー、ワイン、日本酒、漬け物、、、常食としているものの奥深さを、より身近に感じたいと考えています。
タンパク質を設計し、資源と環境の未来を切り拓く
産業で役立つ酵素を対象に、より高性能なタンパク質分子を設計する研究に取り組んでいます。酵素は、化学反応を効率よく進める生体分子であり、環境負荷の低いものづくりや資源循環型社会の実現に欠かせない存在です。我々の研究では、タンパク質の配列や立体構造の情報をもとに、酵素の反応効率や安定性、特定分子への結合特性を計算機上で予測・設計します。こうした手法は、金属イオンと特異的に結合するタンパク質の設計にも応用でき、植物を用いて有用金属を回収するファイトマイニングや、レアアース元素の検出・濃縮といった分野への展開が期待されています。情報解析を通じて分子のふるまいを事前に見通すことで、産業や環境課題の解決につながる新しいタンパク質を生み出すことを目指しています。
タンパク質のつながりから、生命と疾患を読み解く
創薬標的となるタンパク質どうしの分子間相互作用の解析は、生命現象の理解において重要な研究分野です。細胞の中では、多くのタンパク質が単独ではたらくのではなく、互いに結合し、複雑なネットワークを形成することで機能しています。疾患は、こうした相互作用のバランスが崩れることで引き起こされることも多いです。私たちの研究では、疾患に関わるタンパク質が、どの相手と、どのような形で結合し、どのようにはたらきを担っているのかを、配列情報や立体構造データをもとに解析しています。分子レベルで相互作用を理解することで、正常な発生や細胞機能がどのように維持されているのかを明らかにし、そこから逸脱した状態をどのように制御できるのかを考える手がかりを得ることが目的です。バイオインフォマティクスを用いることで、膨大なデータの中から重要な相互作用を見つけ出し、疾患にはたらきかける基盤的な知見を獲得することを目指しています。